2020年4月3日金曜日

陸游のネコ漢詩「鼠 書を敗る」



陸游「鼠 書を敗る」<『剣南詩稿』巻63

「饒舌館長」に何度も登場してもらっている南宋のネコ詩人・陸游のネコ漢詩をまたまた僕の戯訳で……。ちなみに、中華書局出版の『陸游集』に「緘藤」とあるのは「緘縢」の誤りでしょう。『諸橋大漢和辞典』によると、「緘縢」[かんとう]とは「綴じからげる」ことですから、ここでは書物の意味だと思われます。コンテクストから「稀覯本」と訳してみましたが、どうでしょうか。

  雲は去りゆき雨も止み カラスが鳴けば窓白む
  短いものだ!秋の夜 寝てない気がする一年も
  夜が明けすぐに布団あげ 頭巾をつける暇もなく
  机上の本をよく見ると ネズミのかじった跡がある
  タカツキ・ワリゴなどならば かじられたって構やせぬ
  我が物顔にそこら中 出てきちゃ本を無茶苦茶に……
  無用になった書物箱 焚書のわざわいいつの世も……
  飼ってやってる我がネコよ! なぜ穴に入り捕まえぬ?
  遂にやられた稀覯本 責任問うても何になる
  怠惰は自分で治すべし それまでネズミはやり放題

0 件のコメント:

コメントを投稿

東京都美術館「田中一村展」13

   もう一人、田中一村のすばらしさを、いや、すごさを私たちに教えてくれた恩人を忘れるところでした。 NHK 出版の大矢鞆音 ともね さんです。その大矢さんに『田中一村 豊饒の奄美』( NHK 出版  2004 年)というモノグラフがあります。その最後は「作品の中に深いかなしみと...