陸游「鼠 書を敗る」<『剣南詩稿』巻63>
「饒舌館長」に何度も登場してもらっている南宋のネコ詩人・陸游のネコ漢詩をまたまた僕の戯訳で……。ちなみに、中華書局出版の『陸游集』に「緘藤」とあるのは「緘縢」の誤りでしょう。『諸橋大漢和辞典』によると、「緘縢」[かんとう]とは「綴じからげる」ことですから、ここでは書物の意味だと思われます。コンテクストから「稀覯本」と訳してみましたが、どうでしょうか。
雲は去りゆき雨も止み カラスが鳴けば窓白む
短いものだ!秋の夜 寝てない気がする一年も
夜が明けすぐに布団あげ 頭巾をつける暇もなく
机上の本をよく見ると ネズミのかじった跡がある
タカツキ・ワリゴなどならば かじられたって構やせぬ
我が物顔にそこら中 出てきちゃ本を無茶苦茶に……
無用になった書物箱 焚書のわざわいいつの世も……
飼ってやってる我がネコよ! なぜ穴に入り捕まえぬ?
遂にやられた稀覯本 責任問うても何になる
怠惰は自分で治すべし それまでネズミはやり放題
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