サントリー美術館「絵巻マニア列伝」オープニング(3月28日)
今日からサントリー美術館で始まった「絵巻マニア列伝」は、たくさん絵巻物の名品を集めながらも、単なる絵巻名品展となることを厭い、まったく新しい切り口でその魅力を語ろうとする刺激的特別展です。
かつて東京国立博物館や京都国立博物館で開催された絵巻物名品展は、さすが国立博物館だと思わせる大規模な展覧会でしたが、それらとはコンセプトを異にしているといってよいでしょう。斬新なアイディアを、分かりやすい展示にまとめ上げた担当学芸員・上野友愛さんの努力をたたえたいと思います。
ピンクの表紙がこの季節にピッタリなカタログから、「ごあいさつ」の一部を掲げて、内容紹介に代えることにしましょう。
本展では、後白河院や花園院、三条西実隆、そして足利歴代将軍など《絵巻マニア》とでも呼ぶべき愛好者たちに注目し、鑑賞記録などをたどりながら、その熱烈な絵巻享受の様相を探ります。マニアたちの絵巻愛は、鑑賞や蒐集だけにとどまりません。彼らの熱意は同時代の美術を牽引し、新たな潮流を生み出すエネルギーとなりました。有力なパトロンであった絵巻マニアたちの姿を追うことで、知られざる絵巻制作の実態と背景もご紹介します。
絵巻物のオリジンは「過去現在絵因果経」のような経絵にありました。もちろん、中国で生まれた様式であり、画面形式でした。これが我が国へ伝えられて、日本の絵巻物へと変身したのでした。
それは中国美術が日本化されて日本美術となるという、大きな潮流に棹差すものでした。しかし王朝文化の時代に入ると、もう日本独自の画面形式、あるいは様式画風といってもよいほどに、絵巻物はジャパナイゼーションが進みました。
それ以降、近代にいたるまで、絵巻物は日本人に愛され続けてきました。それはなぜなのでしょうか。私見では、日本の絵画が文学と、とくに物語や説話と分かちがたく結びついていたので、それを表現するのに絵巻物はとてもふさわしかったのだと思います。
物語や説話は、基本的に時間の経過とともにストーリーが展開していくものですから、横へ横へといくらでも続けることができる絵巻物は、とても相性がよかったにちがいありません。
*ここまではテスト版――いよいよ明日4月1日から、本当の「饒舌館長」が始まります。よろしくお願い申し上げます。