2019年7月4日木曜日

静嘉堂文庫美術館「書物に見る海外交流の歴史」6


清の考証学は、異民族国家であった清朝による学問政策の結果であるという通説を認めた上でなお、書物の芳しい香りを抜きには語れないように思います。しかし清初の時代は、それでもまだよかったかもしれません。近代を迎え、西欧文化に基盤を置く近代国家を建設しなければならなくなったとき、いち早く目覚めた近代中国知識人の苦悩は、この点にあったように思います。

汗牛充棟の古典的書物を放擲し、西欧の近代思想と近代科学を学ばなければならない、そして国家と社会というものをみずから考えなければならない時代がやってきたのに、多くの知識人は古典的書物に囲まれて唯々諾々としているという焦燥です。とくに僕が興味を覚えるのは、そのように考える先覚的知識人の中にも、やはり書物の魅力あるいは魔力から逃れることができなかった例を、容易に見つけられるという事実です。

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