2019年7月5日金曜日

静嘉堂文庫美術館「書物に見る海外交流の歴史」7



 さらに時代が下ると、このような書物に対する見解をより一層はっきり表現する知識人も登場してきました。すでに曜変天目に関する私見を述べたとき引用した『中国神話』の著者・聞一多は、つぎのように述べています。かつて掲げたことがあるような気もしますが、桑原武夫の『一日一言』(岩波新書)をそのまま引いておくことにしましょう。おそらく『聞一多全集』のなかに収められているんだと思いますが……。

私は十年余りも古書の山のなかで暮らして、確信ができました――わが民族、わが文化の病根がはっきり分かったのです。そこでそれの処方箋を書く気になりました。その方式が、文学史(詩史)になるか、または詩(史詩)になるかは分からないし、どれにしても駄目かもしれません。決定的な処方箋ができ上がるかどうかは、環境がそれを許すか否かにかかっています。しかし、私としては、このやり方に誤りはないと信じています。実は私はあの古書の山を誰にも増して憎むものです。憎むからこそ、そいつをはっきりさせずには済まされないのです。 (臧克家氏への手紙)

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