もっとも『肉筆浮世絵大観3<出光美術館>』に解説を担当した大久保純一さんは、岩田秀行さんの教示によると礼を尽くしつつ、先の5代目岩井半四郎を初代岩井紫若にあてています。
満月を浮かべる青い夜空、川面に映る月影や往来する舟の影、役者や橋杭が地上に作る影が、現代人の視覚にもよく馴染みますが、これらはみな国芳が所蔵していた西洋画や、洋風画から摂取した描写だったにちがいありません。加えて、さすが戯画の傑作「荷宝蔵にたからぐら壁のむだ書」を遺した国芳だと感じさせる傑作肉筆です。
『肉筆浮世絵大観』の図版では平板にみえますが、ルクスを少し落とした江戸東京博物館の会場では夜景の雰囲気と奥行きがとてもよく感じられ、改めていい絵だなぁと思いながら眺めていました。「差出し」のような効果が、会場では感得できたことも不思議でした。

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