「僕の一点」は吉澤雪庵の「寒山拾得図」ですね。大きな絹本の掛幅画です。右側の拾得は岩を硯にして墨を摺り、左側の寒山は筆を右手に持って岸壁に文字を書こうとしています。拾得の後には、チョット羅漢のように見える豊干禅師が座って寒山の方を見ています。これを見てすぐ思い出すのは、上に掲げた牧谿の「寒山拾得図」です。その図様から見て、雪庵が牧谿の「寒山拾得図」をもとにしたことは明らかです。
もちろん雪庵は背景などをかなり変えていますが、牧谿の作品なくしてこれを描くことは不可能です。しかしこんなことをルル述べるよりも、画面左下にある「丙寅桂秋既望 法宋人牧渓筆 雪庵文行」という落款がそれを教えてくれています。文行は雪庵の名、丙寅は慶応2年(1866)に当たります。落款の左脇に大きな「聴雨軒」白文方印と、「晴雨閑房」朱文方印が捺されています。雪庵のとても優れた大作です。雪庵の傑作とたたえるも不可ないでしょう。

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