もっとも水野稔先生は、「それら(『鸚鵡返文武二道』など)はかならずしも新政を批判するものでもなく、たまたま黄表紙の戯謔ぎぎゃくとうがちが、新しいトピックとして時事問題をとりあげたにすぎず、そこに意識的な根強い幕政風刺の意図を見いだすことはできない」と指摘しています。
確かに近代的な意味での政治批判とは異なるでしょうが、春町が単にウケねらいや、新しいトピックといった軽い気持ちでテーマに選んだとはどうしても思えません。武士がこのような本を書いて出版すればどういうことになるか、春町にはよく分かっていたはずです。「確信犯」だったのです。
封建的身分社会にあって、政権からの召喚とか、さらに手鎖とか、身上半減とかのダメージは、現代と比較にならぬほど重かったのではないでしょうか。春町を含め彼らはそれを賭して、みずからの道を歩んだのです。そう思わなければ、彼らも浮かばれません。
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