2025年6月3日火曜日

東京国立博物館「蔦屋重三郎」14

死の訪れが間もないことを自覚すれば、もう怖いものはこの世に何もありません。そうだとすれば、浜田義一郎先生が引用する先の倉橋家文書が事実である可能性は、きわめて高いということになります。したがって自死というのは、あくまでウワサだったのではないでしょうか。いずれにせよ、恋川春町はすごい人間だと感を深くしますが、「いい加減はよい加減」なんていっている僕には、真似をしたくともできませんね()

ところで春町は純真で自己の信念に誠実だったと書きましたが、それだけにチョッと内向的性格だったようにも思われます。あるいはややペシミスティックだったのかもしれません。僕がそのように想像するのは、

我もまた身はなきものとおもひしが今はのきははさびしかりけり

という春町辞世の一首を知るからです。

 

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根津美術館「唐絵」6

また島田先生は、「題辞、題詩が単に画図をみた印象、感想を述べるだけでなく、画図の主題と密接な関連があって、 画図の十分な理解のためにはその詩文の解釈が欠かせないとか、題跋の加わることが予期されるというような条件をおくことが必要であろう」と指摘しています。 さらに島田先生は、詩画軸...