2025年1月27日月曜日

東京国立博物館「大覚寺」6

 

嵯峨天皇「内史貞主が『秋月歌』に和す」

  空は秋の気 月光が 射し込んで来る静かな夜

  すだれを半ば巻き上げりゃ 満ちた月の輪 眼前に……

  取りすがろうと手を上げて みたって誰もできゃしない

  襟を開いて月影つきかげを 入れても胸まで届かない

  雲がかかって天空に 清き光はわずかだが

  風が雲 吹き払うとき 明らけくなる――見てる間に

  大きな秦しんの鏡のよう 山ぎわ離れ昇ってく

  色は楚国の白き絹 夜も白むかと錯覚す

  どんなに月が欠けてても やがて満ちてく十五夜に……

  この世の人はみな友だ 一つの月の下に居りゃ

  月光――秋に捨てられた 班女はんにょの白き扇のよう

  明月――かつて阮籍げんせきの 帷とばり照らしたのと同じ


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