2020年5月14日木曜日

醍醐書房『視覚の現場』5



先日頂戴した第2号は、「関西の日本画」という特集号にもなっていて、充実した内容に感を深くします。「僕の一点」は、清荒神清澄寺鉄斎美術館の柏木知子さんが寄稿した「香椿の木――鉄斎旧宅を想う」ですね。鉄斎が終の棲家とした住まいは、いまも京都市上京区室町通一条下ル薬屋町に残っています。京都美術工芸大学につとめていたとき、一度お邪魔しようと思いつつ、そのままになってしまいました。

その庭には、鉄斎が愛して止まなかった大椿[チャンチン]の木が植えられているそうです。鉄斎美術館所蔵の「荘子八千椿図」には大椿の林が描かれていますが、鉄斎が慈しんだこの庭を仙境に見立てた作品ではないかと、柏木さんは推定しています。木村蒹葭堂も田能村竹田も似た試みを行なっていますから、それにちがいありません。

ちょうどいま僕は、美術雑誌『聚美』のために、「富岡鉄斎――老荘思想と道教」の「続」を書いていたところだったので、とくに興味深く拝読したのでした。もっとも、この鉄斎論も妄想と暴走かな( ´艸`) 

0 件のコメント:

コメントを投稿

東京都美術館「田中一村展」9

葉時代の傑作に「仿蕪村四季山水図」(田中一村記念美術館蔵)があります。一村を魅了した蕪村のオリジナルも知られています。蕪村が創り出した絵画と俳句の魅力は、微妙な光の感覚――「微光感覚」にありというのが持論ですが、この一村四幅対もすばらしい微光感覚にあふれています。そう思ってこのこ...