2018年1月23日火曜日

静嘉堂文庫美術館「歌川国貞展」2


講演と見学を終えたあと、土屋さんはかのすし屋通りの一軒に誘ってくれました。雪は霏々として降り、腰まで積もっています。そのなかをタクシーで訪ねたおすし屋さん――名前は忘れてしまいましたが、その味を忘れることはありません。

宴果てて、レトロ感覚にあふれるホテル・ヴィブラント・オタルに戻るとき、タクシーの窓から見えた、これまたレトロ感覚にあふれた銭湯にどうしても入りたくなり、さらに激しく降る雪のなか、ホテルのタオルをもって出かけました。もっとも強く印象に残る銭湯の一つです。土屋さんに訊くと、小樽には今も銭湯がたくさん残っており、その数年まえには、特別展「小樽の銭湯」を開いたそうです。

前置きが長くなってしまいましたが、国貞は初代歌川豊国の門人にして、師匠ゆずりの役者似顔絵や美人画を得意としました。幕末期最高の人気を集めた浮世絵師で、ものすごい多作家でした。吉田暎二氏は、『浮世絵事典』のなかで、次のように述べています。

国貞は初代豊国の門下中での偉才であり、精力家であり、79年の一生の間、その仕事の分量からいえば、おそらく浮世絵画家中での、製作数の最高記録の保持者であろうと思われる。その健筆は一枚絵および数枚続錦絵から、数多い合巻物、秘画、秘戯絵本の数々を描き出している。のちに三世豊国となってからの仕事をも集めれば、おそらく万をもって数えてもあやまりないと思われる。

 

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