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2017年12月31日日曜日

群馬県立土屋文明記念文学館「美術と文学」5


 我が恩師・山根有三先生は、東大を退官されたあと、群馬県立女子大学で教鞭をとられました。群馬県立土屋文明記念文学館の館長・篠木れい子さんは、山根先生と一緒にその大学で学生を指導した同僚だそうです。また講演終了後、山根先生のお弟子さんが数人、挨拶と質問をかねて演台のところまで来てくださいました。山根先生ゆかりの方々に、僕のおしゃべりトークを聞いてもらったことを、とてもうれしく思いながら、中田さんの案内を得て、保渡田八幡塚古墳へ向かいました。

この関東を代表する前方後円墳は、現在復元整備されて、一種の屋外博物館のような施設になっています。群馬県立土屋文明記念文学館が開館した1996年とほぼ同じころ整備されたそうで、高崎市立かみつけの里博物館などとともに、上毛野はにわの里公園の主要な文化施設となっています。一度ぜひ見学したいものだと思ってきましたが、中田さんのお陰でその機会に恵まれることになりました。これから先は、「前方後円墳」とタイトルを改めて、例のごとく偏見と独断に満ちた私見をおしゃべりすることにしましょう。

2017年12月30日土曜日

群馬県立土屋文明記念文学館講演「美術と文学」4


  しんくみだしてけさゆふたかみを ぬしのそひねでみだれがみ

   千辛復万苦 今朝手親梳 嚥婉同床裡 雲鬟故乱紆

    一生懸命苦労して 朝に自分で結った髪 

[いと]しいあなたとベッドイン きれいな髷も乱れちゃう

  ぬしハわしゆえわしゃぬしゆゑに 人にうらみハないわいな

   君為妾労思 妾為君傷神 元関君与妾 何為恨它人

    君は我[]がため多情多恨 我は君がため恋わずらい

    しかし二人の問題よ なぜに他人を恨みましょう

  そらとぶとりがものいふならバ たよりきゝたやきかせたや

   空外在飛鳥 若能為言語 相思妾与歓 消息通各処

    青空高く飛ぶ鳥よ もしも言葉がしゃべれたら

    愛し合ってる我[われ]と君 思いを告げてと頼むのに

2017年12月29日金曜日

群馬県立土屋文明記念文学館講演「美術と文学」3


 だいたいこれまで書いたりしゃべったりしてきたものが多いんですが、今回の目玉は葛飾北斎の『潮来絶句集』です。

もっとも、これも『北斎と葛飾派』(日本の美術№367)の「狂歌絵本と文化史的背景」というコラムで取り上げたことがあるのですが、今回はその漢詩に戯訳をつけてみたんです。「また例のヤツか」なんて、言わないでください。

『潮来絶句集』は俗謡である潮来節に、富士唐麿という狂歌師にして藤堂龍山という漢学者が漢訳詩をつけたというところがミソなんですが、僕はこの漢訳詩に戯訳をつけてみたんです。つまり、潮来節→漢訳詩→戯訳となっているわけです。ところで、潮来節だけを示して、これは中国の艶詩を井伏鱒二が訳したものだと言っても、誰一人怪しまないんじゃないでしょうか。先のレジメに引いた一首に続いて、あと二首ほどの戯訳を掲げておきましょう。

2017年12月28日木曜日

群馬県立土屋文明記念文学館講演「美術と文学」2



中田さんからは、とくに本阿弥光悦、尾形光琳、与謝蕪村、池大雅、葛飾北斎の5人を取り上げて欲しいといわれたので、おのおの2点の代表作を選んで下記のようなレジメを作りました。もっともそのあとに、この「饒舌館長」から引用した蕪村や北斎の拙文もちょっと加えたのですが、これはカットすることにしましょう。



キーワード

 日本美術の素性 簡潔性 シンプリシティー 書画一致 文美融合 江戸時代

 パクス・トクガワーナ 町衆 庶民 和漢 見立て 物語 説話 和歌 漢文学

 能謡曲 俳諧 俳画

①本阿弥光悦「舟橋蒔絵硯箱」(東京国立博物館蔵)

  東路のさのの舟橋かけてのみ思ひわたるを知る人ぞなき 源等

②本阿弥光悦・俵屋宗達「鶴金銀泥下絵三十六歌仙和歌巻」(京都国立美術館蔵)

  藤原公任

 若の浦に潮満ち来れば潟をなみ葦辺をさして鶴鳴き渡る 赤人

 天雲に翼打ちつけて飛ぶ鶴のたづたづしかも君しまさねば 人麻呂

③尾形光琳「燕子花図屏風」(根津美術館蔵)

  伝在原業平『伊勢物語』第9段・東下り

  から衣きつゝなれにしつましあればはるばるきぬる旅をしぞ思ふ

  世阿弥(金春禅竹)『杜若』

④尾形光琳「紅白梅図屏風」(MOA美術館蔵)

  林和靖「山園小梅」  伝世阿弥『東北』 

⑤与謝蕪村「夜色楼台図」(個人蔵)

  万菴原資「東山に遊びて落花を詠ず」「中秋含虚亭の作」 李攀龍「宗子相を懐う」

⑥与謝蕪村「銀地山水図屏風」(MIHO MUSEUM蔵)

  于済『聯珠詩格』

 張籍「蛮州」

  貴州の蛮州 水悪く 洞穴にまで流れ込む

  それでも人は家を建て 桟道へんまで住んでいる

  山はあるのに辺鄙ゆえ あるべき城も築かれず

  州名書いた松の札 象州へ向き立つだけだ

周南峰「閩淅の分水界」

  くずれた土塀の古い駅 長い歳月物語る

  垣根が分かつ犬と鶏[とり] かつては一緒にじゃれたのに

  東の家からちょっとだけ 西のお宅を訪ねれば

  淅江人が福建へ つまり出かけたことになる

⑦池大雅「楼閣山水図屏風」(東京国立博物館蔵)

  邵振先ほか「張還真翁祝寿画冊」

 『岳陽風土記』張説の逸話 『酔翁亭記』欧陽脩の逸話 

⑧与謝蕪村・池大雅「十便十宜帖」(川端康成記念館蔵)

  李笠翁「十便十二宜詩」

⑨葛飾北斎「潮来絶句集」

  狂歌絵本 狂詩絵本

⑩葛飾北斎「富嶽三十六景」

  河村岷雪『百富士』 富士講  蓬莱思想  日蓮宗

2017年12月27日水曜日

群馬県立土屋文明記念文学館講演「美術と文学」1


群馬県立土屋文明記念文学館連続講座<美術と文学:イメージとテキスト――イタリア美術と日本美術の泰斗が語る!!――>「江戸時代の美術と文学――光悦・光琳・蕪村・大雅・北斎を中心に 漢詩の戯訳紹介もあわせて――」(2017年蕪村祥月命日)


 群馬県立土屋文明記念文学館の学芸員をつとめる中田宏明さんから、「美術と文学」あるいは「イメージとテキスト」といった内容で、講演をやって欲しいと頼まれました。中田さんは東大時代の教え子です。教え子から講演を依頼されるというのは、教師冥利に尽きるというものです。

二つ返事で引き受け、例のごとく、「一人でも多くの聴講者が集まるようなタイトルを考えておいてね」と頼んだところ、中田さんが考えてくれたのが、標記のタイトルです。以前、ある美術館から与えられた「笑う館長 名画を語る」とか、「意外に楽しい文人画」なんていうのと比べると、いかに中田さんが真面目人間であるか、一目瞭然たるものがあります(!?) 

それはともかく、「イタリア美術と日本美術の泰斗が語る!!」というシリーズの副題は、何となく面映く、配布資料では「泰斗」のあとに「?」をつけちゃいました。もちろんこれは「日本美術の泰斗」だけにかかる「?」です。すでに11月、「『絵画は無声の詩、詩は有声の絵画』、西洋の芸術ジャンル間の諸問題――姉妹芸術から優劣比較(レオナルド)・競合(エクフラシス)まで――」という講演を終えている小佐野重利さんは、疑いなくイタリア美術の泰斗です!!

2017年12月26日火曜日

静嘉堂文庫美術館「あこがれの明清絵画」<書芸>11


離合集散いうまでも なく世の中の常であり

長短なんか気にしても それの最初は闇の中

新しいこと始めたら 「ちょっと休もう」なんて☓!!

いったんゴールへ向かったら 死んじゃったって構わない

神様みたいに奇蹟をば いま起こそうと思ったら

俗塵浴びて生きるべし 所詮この世は仮の宿……

こんな嘆きを発せずに 生きれるもんか 誰一人

これを解決する途は 真理の推考――ほかになし

のちの教えとなる言葉 残せりゃ同じく不滅だが

百年河清を俟[]つような 消極性など論外だ(其の五)

*陸柬之の「蘭亭詩」には欠字があるんですが、厳調御はそれをみんな無視して詰めて書いてしまっています。そこで松井如流編『唐 陸柬之 文賦/蘭亭詩』<二玄社書跡名品叢刊>も参考にしながら戯訳を試みてみました。 

2017年12月25日月曜日

静嘉堂文庫美術館「あこがれの明清絵画」<書芸>10


[かがみ]明るく澄んでいりゃ チリもホコリも積もらない

鑑 曇ればたちまちに 卑しい心が顔を出す

これを体得することは もちろん容易じゃないけれど

三度 教えてもらえれば 自然の法理も腑に落ちる

心はつねに変転し ひとっところにゃ留[とど]まらず……

しかし自信が持てたなら おのずといられる平静で

絃の楽器も篳篥[ひちりき]も 笛もまったくなくたって

深淵思わす泉には さざなみの音清らかに…… 

口をすぼめて低い声 大きな歌声出さずとも

想いを詠める詩歌には あとまで残る余韻あり

たとえ一瞬なりとても 真の楽しみ得たならば

1000歳までもそれにより 長生きできるにちがいない(其の四)

絶滅写真作家(!?)杉本博司さんの魅力を改めて感じさせてくれる特別展が竹橋で開催中です!!13

  しかし もう10回を越えてしまいました。しかもこのあとに、 ぜひ 紹介したい展覧会や チョッと書いておきたいことが 目白押しです 。「杉本博司 絶滅写真」 へのオマージュ はこのあたりで 中締め にしたいと思います が、改めて杉本さんにお礼申し上げたいことが あります。   ...