2025年7月8日火曜日

太田記念美術館「鰭崎英朋」8

 「姉(実際は叔母ですが、竪川昇は年が近いので姉と呼んでいます)の運命、死ではない。裾が浪間に流れながら、乳房のあたり浮いて出た。浮き上がったばかりか、其のどしゃ降りの雨に打たれても、沈みはせんで、手足の動くも見えんぢゃが、凡そ水練の達者が行っても、それだけには行くまいと思ふほど、墨のやうな湖の上へ、姉の姿唯一ッ。衣服の色も美しく、楽に、ゆらゆらと岸へ着いた。……」

 「屈強な野郎の腕よ。するとな、仰向あおむけになった姉の姿が、くるりと俯向うつむけ。帯も髪も、ずるずると下がったが、こりゃ宙に抱かれて居たんで。むッくりと水から出た、素裸すっぱだかの半身を、蘆の中に顕あらわいたは、助けに行った船頭ではない、色の白い勇侠いさみな奴だ。……」

 

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サントリー美術館「絵金」17

その時姫と障子に映る長門は、明らかに鏡像 ミラーイメージ 関係に結ばれています。そして画面左奥には、 3 人の人物が描かれています。先の引用には何も言及されていませんが、展覧会カタログの解説が明らかにしてくれます。男は時姫の奪還を命じられたけれども、逆に時姫に斬りつけられて井戸に...