美樹を救った色の白い勇侠な奴がだれか、ここでは分からないのですが、170ページもあとになって、水泳が得意で「河童」と呼ばれている垂井という学校の教員であることが判るのです。今度は静かな夜の船上、「六尺の褌雪の如く、白身鶴に似たる一漢子」である垂井が、「え、えゝ、竜巻の時は扶たすけられた、飛んでもねえ、何、お前様まえさん、夫人おくさま。……」と美樹に語りかけているからです。
英朋が口絵に描いたのは正にこのドラマチックなシーン、英朋が『続風流線』を全部読んだとは思われず、おそらく鏡花から指定されたのでしょう。それに応えて英朋は何度も下絵を描きなおし、作者の期待を超えたであろうロマンティシズムに満ちた口絵を創り出したのです。鏡花の文にある「乳房のあたり」も、英朋は抜かりなく取り入れて描いているようです。
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