2023年11月19日日曜日

出光美術館「青磁」5

 

この壷をながめながら、僕はかの酒仙詩人、ブッチャケをいえばアル中詩人、李白の居士号を思い出したんです。李白は青蓮とか青蓮居士とか号していました。

青い蓮――この蓮をモチーフにした「青磁鎬文壷」そのものです。青磁鎬文壷→青い蓮→青蓮→李白→酒と連想されて酒壷になったのではないでしょうか。あるいは逆に酒壷を作ろうとして、李白からの連想で青磁鎬文壷が考案されたのかもしれません。いずれにせよ、当時の中国において誰でも思いつく連想だったにちがいありません。

このタイプの壷は、本来お酒用に焼成された陶磁器であり、それは酒仙詩人李白のイメージと結びついていたんです。だからこそ、青磁鎬文壷は中国教養人の間でたたえられ、愛され、すぐれた作品が生み出されていったのではないでしょうか。



0 件のコメント:

コメントを投稿

東京美術『日本視覚文化用語辞典』2

 本邦初の辞典がここに誕生したんです。しかも日本語のあとに、すぐれた英訳がついているから便利です。便利なだけじゃ~ありません。日本語と英語における視覚文化へのアプローチが意外に異なっていることが浮彫りになり、おのずとわが国視覚文化の特質といった問題へ導かれることになります。この質...