棟方志功君は奇人である。一度同君に面接した経験のある人なら、私のこの説に同感しない者はあるまい。
眼病の棟方志功眼を剝むきて猛然と彫えるよ森羅万象
嘗て私は戯れにこんな歌を詠んだことがあるが、あの噛みつくように面を伏せて、恐ろしい速力で筆を運ばせるあの顔つき(毛筆を揮う時は勿論、鉄筆を以て版画を彫る時もその速力には変りがない)、あの独特な津軽弁の物の言い方、アイヌの血が混じっているかと思われるあの皮膚の色、何一つとして人を驚かさずにはおかない。
農家の師走の仕込み酒 濁っていたって構やせぬ 客へのご馳走 鶏 とり や豚 豊年ゆえか山盛りだ 川は入り組み山高く 行き止まりかと思ったら 芽吹く柳と桃の花 こんな処にまた一村 笛や太鼓が響き来る もうすぐ春の祭りらしい みんなの着物は質素だが 古きゆかし...
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