2020年12月29日火曜日

アーティゾン美術館「琳派と印象派」11

 

そのモチーフの描写たるや、たとえば山吹を眺めるに、『万葉集』は高市皇子尊[たけちのみこのみこと]の「山振[やまぶき]の立ちそよひたる山清水酌みに行かめど道の知らなく」の古代的浪漫からは遥かに遠いが、だからと言って与謝蕪村の「山吹や井手を流るる鉋屑[かんなくず]」ほど現実主義的ではない。

撫子に目を移し、『後撰集』の「とこ夏に思ひそめてはひとしれぬ心のほどは色に見えなん」を思い起こせば、屏風の描写はよほど客観主義的に感じられるが、しかし夏目成美の「撫子の節々にさす夕日かな」ほど写生主義的ではない。


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