しかし、その年の項には何も書かれていませんでした。何らかの理由で出版にいたらず、版下絵のまま伝わってきたために、かの永田さんも知ることがなかった大発見であるということになります。
文政12年、北斎は古希の70歳に達していました。僕は北斎の画歴を6期に分け、60歳代を充電期としています。60歳代は70歳代の錦絵期、80歳代の肉筆期へのエネルギーを蓄えていた時期でした。還暦を過ぎたころから70歳代の初めにかけ、北斎は色々な出来事に遭遇し、じっくり創作へ向う時間が限られていましたが、かえってそれが充電期にプラスとなったように思います。『葛飾北斎年譜』からピックアップしてみましょう。
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