2020年6月2日火曜日

石守謙「物の移動と山水画」(『國華』)9




この夜から間もなくして、孫一元は友人の唐寅と出会い、身に携えていたこの摺扇を見せると、唐寅はその夜の舟遊びと語らいを想像し、また追和詩を書き加えました。ここに詩人・唐寅が登場するのです!! 先の拙文に僕は、吉川幸次郎先生の『中国詩人選集』第2集<元明詩概説>から唐寅の一首を引用しましたが、「平湖夜泛図」の五言律詩も軽やかで、すごくいいと思います。またまたマイ戯訳で……。
 静かな夜に舟を出しゃ 涼風吹き来るマコモ田に
 間遠に光る漁家の灯[] 天まで伸びてるお墓の木
 詩を詠むごとき虫の声 月光酒宴の舟へ射す
 先生 貴兄を客にして いつもながらに楽しそう 


0 件のコメント:

コメントを投稿

根津美術館「唐絵」5

とくに応永年間、熱狂的 に愛好されたので、応永詩画軸 などと呼ばれることもあります。 詩画軸のことを勉強するときには、必ず『禅林画賛   中世水墨画を読む』 ( 毎日新聞社 ) という本を手元に置かなければなりません。そして監修者である島田修二郎先生の論文「室町時代の詩画軸につい...