2019年12月30日月曜日

栃木県立美術館「菊川京三の仕事」5



 僕が『國華清話会会報』18号(2011)に寄稿した「『國華』を支えた絵師・菊川京三」も、ちょっと一部をアップさせてもらうことにしましょう。

菊川さんは歌川派系の美人画家、池田輝方の弟子であったが、奥様は同じ系統を引く川瀬巴水に就いて学んだ女性とのことであった。三時になると、その奥様がお茶とお菓子を運んできてくれた。 琴瑟相和すとはこのような夫婦のことだ――まだ結婚していなかった僕も、ただちに確信することができた。お茶を飲みながら、時々大真面目で話す菊川さんの冗談がとてもおもしろかった。

十二月に入ると、菊川さんは日を選んで、徳永君と僕を銀座のライオンに連れて行ってくれた。それは実に楽しい忘年会だった。僕らは遠慮なくご馳走になった。國華の帰り、徳永君とはよく千歳烏山駅前で飲んだが、一番の馴染みはスタンド飲み屋だった。

百円を入れると、コップに酒が注がれる機械が数台並んでいるのだが、二級酒は一杯になり、一級酒だと半分くらいにしかならないというチープな飲み屋である。肴は同じく機械で買う乾き物だった。それに比べるのも失礼な話だが、ライオンの忘年会は豪華この上ないものだった。

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