2019年7月6日土曜日

静嘉堂文庫美術館「書物にみる海外交流の歴史」8


 聞一多には、書物への愛惜の情がいまだ感じられますが、かの魯迅になると古書の山に敵対する気持ちがもっとはっきりと表現されています。それは『阿Q正伝』を著わして、中国の国民性に冷徹な眼を向けた魯迅の言葉として、スンナリと理解することができます。若干、青年を扇動しようという感情がなかったわけではないとしても、魯迅の本心であったことは疑いないでしょう。

私が、青年はなるべく、あるいは全然、中国の書物を読むな、と主張したのも、多くの苦痛をもってあがなった真剣な言葉であり、決して一時の快をむさぼる言葉でも、あるいは笑談、憤激の言葉でも何でもなかったのである。古人は、書を読まなければ愚人になる、といった。それはむろん正しい。しかし、世界はそうした愚人によって造られているものであって、賢人は絶対に世界をささえることはできない。ことに中国の賢人はそうである。             (『墳』の後に記す)

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