2019年7月30日火曜日

松浦武四郎10


武四郎は、自分が死んだらこの「一畳敷き」を解体して荼毘の薪にし、骨は大台ケ原に埋葬してほしいという遺言を残して旅立ったそうである。おそらく幕末明治といえども、亡骸をそのまま田圃に打ち捨てておくことなど、許されなかったであろう。辞世はナチュラリスト武四郎の憧憬――もしそれが可能なら、どんなに素晴らしいことだろうなぁという憧れの気持ちを詠んだものとみるべきだ。

憧れといえば、僕が武四郎に憧れるのは、まずその行動力である。先の江戸行を皮切りに、全国をくまなく旅行して回った行動力である。その記録を整理して、『東西蝦夷山川地理取調図』や、いわゆる多気志楼物を出版することができたのも、すぐれた行動力があったればの話だ。次にその思想性、あるいは感性である。


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