2018年7月14日土曜日

アールグロリュー「平野淳子展」


アールグロリュー「平野淳子展―記憶―墨 和紙 絹 箔 版 そしてデジタル……」<718日まで>

 平野淳子さんは、武蔵野美術大学日本画科を卒業したあと、伝統的な日本画のマテリアルと、写真やデジタルを融合させて、新しい二次元表現に挑戦しているアーティストです。今回、銀座SIXのアールグロリューで開かれた個展のライトモチーフは「ゲニウスロキ」――壊された跡地に新しく建設されつつある国立競技場を<記憶>として写真に収め、それを墨の個性に凝縮させた新世界です。

ゲニウスロキとは、ラテン語のゲニウス(守護霊)とロキ(土地)の合成語で、日本語でいえば「地霊」ですが、それに逆らうことなく建築を行なうべきだとする、18世紀にイギリスで誕生した理念でもあるそうです。西欧の風水だといってもよいでしょう。いまは亡き鈴木博之先生の『東京の地霊 ゲニウス・ロキ』は、東京に焦点をしぼってそれを教えてくれる名著です。

「僕の一点」はトリプティックのように仕立てられた「ゲニウスロキ」三部作。建設中の国立競技場を陰画のように用いて、きわめて高質なコンテンポラリー水墨画を生み出しています。建設中なのに工事の騒音は絶えて聞こえず、その静謐な画面のうちに、古きものの終焉と、やがてはこの新しい<誕生>も終焉の時を迎えるのだという東洋的輪廻を感じ取って、僕は華やかなオープン展の会場で、一人静かにその三幅対に見入ったのでした。

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