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2026年6月4日木曜日

山種美術館「開館60周年記念 川合玉堂――なつかしい日本の情景」6

 


シーンものどかな山裾から、険しい山中に入ってきています。昭和11年は2.26事件の起こった年ですが、世の中はまだまだ安定していたのでしょう。少なくとも窮乏と混乱の昭和20年に比べれば……。いずれにせよ昭和21年の「朝晴」は、「冬嶺松秀」の対極にあるといっても過言ではありません。へたをすると人馬もろとも尾根から転げ落ちそうです。山肌、岩肌もゴツゴツしていて、厳しい感じが画面を覆っています。


三遠を組み合わせた純粋な狩野派風山水図を別にすれば、玉堂の風景画は俯瞰視(鳥瞰視)が基本となっています。「冬嶺松秀」も俯瞰視です。ところが「朝晴」だけは自然を仰ぎ見るような仰瞰構図なのです。それが尾根を行く人馬の不安定な感じを、生み出しているようにも思われます。ここにも僕は、この作品の特異な制作意図を読み取りたいのです。


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