清少納言の歌は、有名な中国の故事を下敷きにしていましたから、そちらの方を取り上げて描けば問題なかったのです。しかし重要なのは、函谷関と中国の関守を描きながら、真の主題は清少納言の相聞歌であったという点です。もっともこれは、藤原行成と恋人同士を気取って詠んだ戯れ歌だそうですが、この絵のテーマは「恋」だといって不可ないのです。
「在原業平」の一図には、砧を打つ月下の景が描かれています。これは明らかに世阿弥の傑作とたたえられるお能「砧」に取材しています。訴訟のため上京し、帰って来ない夫を慕う妻が、砧を打ってさみしさを慰めるのですが、待ち焦がれるうちに亡くなってしまいます。

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