「僕の一点」は、「黒漆剣[くろうるしのつるぎ]」(京都・鞍馬寺蔵)ですね。鞍馬は牛若丸伝説で有名ですが、そこにある鞍馬寺は、宝亀元年(770)鑑真和尚のお弟子さんで有る鑑禎[がんちょう]上人が、毘沙門天を安置した草庵に住んだことに端を発します。
この「黒漆剣」は、蝦夷征伐で有名な坂上田村麻呂の愛刀であったと伝えられています。カタログ解説を担当した京都国立博物館・末兼俊彦さんによると、平安時代初期の9世紀にさかのぼる名刀で、「柄は下地に目の粗い布を張り、黒漆をかけた片手柄で、鞘は薄い革を下地とした上で表面には黒漆を塗る」とあります。ここから「黒漆剣」と呼ばれるようになったのでしょう。ただし鞘は経年劣化が進んでいるとのことで、今回は展示されていません。
「僕の一点」に選んだのは、これが平安時代初期の直刀だからです。弘仁貞観刀(!?)だからです。かつて日本刀に関する独断と偏見をアップしたことがありますが、この実証になくてはならない刀剣だからです。
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