2021年5月30日日曜日

辻惟雄『日本美術の歴史』と沢村忠13

 

東大停年の年と、古稀を迎えた年に、辻さんをお神輿にし、二十人ほどで中国に出かけた。江南と敦煌・龍門を訪ねたのだが、辻さんのよき選択のお陰で、みんな研究上の大きな示唆を得るとともに、とても楽しい旅行となった。辻さんは日本美術史家だが、中国美術に対する関心も大変強い。行く先々でそれに深く感じ入った。

その根底には広く美術、いや文化、もっと言えば人間に対する強烈な好奇心があるのだろう。辻さんの重要な仕事のもう一つに、<あそび>と<かざり>と<アニミズム>をキーワードにした日本美術特質論がある。すぐれた好奇心がなければ、このような発想が生まれるはずはない。傘寿を迎えた辻さんが、MIHO MUSEUM館長として素晴らしい展覧会を連発しているのも、この好奇心ゆえにちがいない。

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