2021年3月9日火曜日

山根登・生の証5



   
 山根先生が晩年までご自宅に飾っていらっしゃったという油絵の「紫陽花」も、人それぞれに何かなつかしい思い出を、よみがえらせてくれるのではないでしょうか。大伴家持が女性の変わりやすい心を、花の色が変わりやすい紫陽花になぞらえたことを知ればなおさらに……。とくに男性は誰しも、懐かしい思い出がよみがえってくるのではないでしょうか(!?)

登さんの作品がもつ懐かしさの秘密を、華道家としての家元が発見し、花に例えたのが次の一節であるように思われてなりません。

 ……登は一度も展覧会に出品しておらず、身内以外登の絵はほとんど誰にも知られていないことです。惜しくてたまりません。花に例えるならば、大輪の美しい花を咲かせられる可能性がありながら、蕾のまま人知れず朽ちてしまう、ということでしょうか。 

0 件のコメント:

コメントを投稿

サントリー美術館「絵金」15

  もう一つの構図的特徴は対角線効果です。「鎌倉三代記 三浦別れ」でも、時姫と三浦之介が作り出す三角形が、画面右上から左下へ向って引かれた対角線の下半分に収まっていることに気がつくでしょう。もちろん厳密な意味で対角線ではありませんが、対角線構図と呼ぶことを妨げません。 対角線...