2021年2月7日日曜日

小川敦生『美術の経済』6

もしこの解釈をトゥオンブリーに当てはめることができるならば、「無題」は「落書きのような作品」じゃ~なく、「落書き」そのものであり、そこに価値があるのだということになります。小川さんも、「純粋性の追究は、哲学に近いことを絵画でやっており、大きな意義がある。だからこそ、価値がある(と筆者は強く思う)のである」と書いています。

 しかし小川さんによると、それだけで必要十分条件を満たしているわけではありません。つまり「作品が特性を理解され、評価され、必要な人々の間に広まり、経済力を持った人々に活動を起こさせるといったことがあってこその、87億円なのである」。じつに正鵠を射る指摘ですが、饒舌館長は人間が必ず有する「自己満足」という感情も考えてみたいのです。 

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