2021年2月10日水曜日

小川敦生『美術の経済』9

その中には、「無題」の所有者以上にお金や株、あるいは不動産を所有している人がいたにちがいありません。しかしそれらは、どんなに巨額であっても、人間が創造した叡智と感性の結晶ともいうべき文化でもなく、芸術でもありません。もっとも、超富裕層の間では、財産の額など問題にも話題にもならないのかもしれませんが……。

文化以外の富を多く蓄えている人々の中にあって、自分だけは高尚なる芸術という富を所有することにより、一段高いステージ立つことが可能になるのです。これこそ最高の自己陶酔でしょう。

こういうことをやりたくってもできない我々は、そんなのお披露目でも自己陶酔でもなく、単なる自己誇示ではないかと考えたくもなりますが、そもそも所有者や超富裕層は、我々のことなんて相手にしていないでしょう。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿

根津美術館「唐絵」5

とくに応永年間、熱狂的 に愛好されたので、応永詩画軸 などと呼ばれることもあります。 詩画軸のことを勉強するときには、必ず『禅林画賛   中世水墨画を読む』 ( 毎日新聞社 ) という本を手元に置かなければなりません。そして監修者である島田修二郎先生の論文「室町時代の詩画軸につい...