周りの女性を数えてみると、赤ちゃんや子供を含めて36人です。36というのは多数を意味する縁起のよい数字で、36歌仙や葛飾北斎の「富嶽三十六景」はよく知られていますね。しかしこの絵は死絵ですから、仏道に志す人を守護する護法神王である36善神と関係づけたらどうでしょうか?
それはともかく、この死絵を「僕の一点」に選んだ理由は、もっぱらかわいらしいネコちゃんにあります。饒舌館長――別名「ネコ好き館長」ですからね(笑) 画面の下の方を見ると、白いネコが前足で涙を拭きながら泣いているでしょう!! もちろん鶴寿が詠んだように雌ネコです。
ネコがよくやる顔を洗っているような仕草を、泣いている姿に転用したところに、画家のすぐれたウィットが感じられます。8代目団十郎の早すぎる逝去を悼む死絵が、トリックスターともいうべきネコちゃんのお陰で、ちょっとユーモラスなものになり、見る人の心を和ませてくれるのです。
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