2020年10月5日月曜日

五木寛之『大河の一滴』11

 

このように読者を感動させてやむことなき五木哲学は、どうして生まれてきたのでしょうか。みずから語るように、五木さんは旧日本帝国の植民地で敗戦を迎え、言語に絶する混乱のなかを、かろうじて生きのびて母国へ引きあげてきました。この過酷な体験から五木哲学が生まれたことは、改めて指摘するまでもありません。それに加えて僕が注目したのは、つぎのような一節です。

「酒はこれ忘憂の名あり」と、親鸞は言ったという。『口伝抄』という書物のなかに出てくる話だ。またむかしの人は「酒は愁いをはらう玉箒[たまばはき]などとも言った。しかし、酒で憂さをはらすことのできる人は幸せだと思う。たとえそれが束の間の忘憂であったとしてもである。しかし、酒を飲めない人間はいったい、どうすればよいのか。


0 件のコメント:

コメントを投稿

今や北斎・広重とともに「風景版画の3H」とたたえられる川瀬巴水を中心とする新版画展が三菱一号館美術館で開催中です!! 17

   三菱一号館美術館「トワイライト、新版画――小林清親から川瀬巴水まで」を内覧会で見せてもらったあとで、 いま饒舌したような 巴水風景版画 サウダーデ 観 が 心に 浮かんでき た ん です。もちろん会場で作品を前にしたときは、ただいいなぁと ながめるだけでしたが……。    ...