2020年6月6日土曜日

石守謙「物の移動と山水画」(『國華』)13



このような一種の大衆化は、画中モチーフの配置からも指摘できるところで、李士達の軸装や巻子装の詩意山水画にはまったくみられないそうです。石守謙さんはその例として、初唐の詩人・沈佺期の詩句から取材した「竹裡泉声図」(東京国立博物館蔵)を挙げています。
李士達の掛幅といえば、静嘉堂文庫美術館にも「秋景山水図」という傑作があります。畏友・湊信幸さんは、「紙本のもつ特質を十分に生かした水墨と淡彩の筆致は、謝時臣とは異なる清爽感あふれる独特の表現を示しており、李士達固有の世界をつくっている」とたたえてくれています。
石守謙さんには、できたらこの「秋景山水図」を使っていただきたかったなぁと思いますが、これには賛詩がないので、やはり無理なお願いというものでしょうか() 

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