2020年6月5日金曜日

石守謙「物の移動と山水画」(『國華』)12


 

 南の四川[しせん]の渡し場に たそがれ時がやってくりゃ
 家路を急ぐ人たちが 先を争い騒がしい
 野中の寺から清らかに 間近に聞こえる鐘の声
 岸辺の村ははるけくて 灯る漁火[いさりび]点々と……
 空行く雁を見ていると 故郷の便り恋しくて
 猿の鳴き声聞いてると 涙の痕[あと]にまた涙
 遠く万里の我が旅路 小舟浮かべるこんな夜
 秋の明月仰いでも たたえる言葉が浮かばない

0 件のコメント:

コメントを投稿

すみだ北斎美術館「北斎をめぐる美人画の系譜」8

  著者は凡例末に記される笹浦鈴成ですが、どういう人かよく分かりません。ところが別に、笹葉鈴成という人がいるんです。この人についても不明でしたが、水野稔先生や中野三敏先生が、『<諸家人名>江戸方角分』という本などによって、松前藩主・松前道広の弟である松前百助であることを明らかにさ...