2019年12月12日木曜日

中国美術学院「歴史と絵画」13



改めて指摘するまでもないが、文人画において最も重要なのは、適意であり、写意である。天真道場においては、その名の通り「天真」が中核に存在したのであり、それは文人画の精神ときわめて近似していた。「天真」は天真道場の絵画理念であるとともに、黒田の絵画理念でもあったことは言をまたない。黒田の東洋的写実主義や日本的洋画が誕生した基底は、この「天真」に求められなければならない。

 第二条は、現在の言葉でいえば石膏デッサンや人体デッサンにあたるのだが、これに限定するというのは、我が国洋画教育において革命的なことであった。これこそ写実主義者としての黒田、リアリストとしての黒田を明らかに示している。黒田芸術の根本には写実があったのである。

その意味では、ルネッサンス以来の遠近法と陰影法を基礎とする西欧的リアリズムの画家であったことになるが、重要なのは、それも第一条の「天真」に従属すべきものだったことである。

0 件のコメント:

コメントを投稿

鎌倉国宝館「扇影衣香」9

  先日、 鏑木清方記念美術館の「あの人に会える! 清方の代表作<築地明石町>三部作」展で井手誠之輔 さん にお会いしたことをアップしました。その井手さんが、この「扇影衣香」展カタログに、「総論 絵から見た鎌倉の美術と東アジア世界――人と仏――」という巻頭論文を寄稿しています。 ...