2019年6月5日水曜日

芳賀徹『桃源の水脈』2


8年ほど前、芳賀さんは館長をつとめる岡崎市美術博物館で、「桃源万歳! 東アジア理想郷の系譜」という特別展を企画開催しました。そこに福田豊四郎の傑作「秋田のマリア」を加えるべく、僕が館長をやっていた秋田県立近代美術館まで、ご自身で出陳依頼に来秋されたのです。この特別展にかける芳賀さんの燃えるような情熱に、深く心を動かされました。

その充実するカタログに拙文を寄稿し、さらに講演する機会まで与えてくださったのも芳賀さんでした。本『桃源の水脈』のあとがきには、その拙文のことまで言及されています。しかも、一緒に寄稿した高橋博巳さん、揖斐高さんとともに、「三氏とも、私のリルケと江戸漢詩の恩師富士川英郎氏の面影を偲ばせる、どこか飄々とした風姿をいまだに伝える文人学者である」とも書いてくださいました。

愛して止まぬ名著『江戸後期の詩人たち』を著した富士川英郎先生ですよ!! うれしく、誇らしく、そしてちょっと穴があったら入りたいようなこの気持ちを、どのように表現すればよいのでしょうか。

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