鳥獣をかたどる真珠の象嵌がほどこされたテーブル――わが国やフランスの高級家具職人なら、その技を盗むために何ものをもなげうつだろう。金色の魚や亀が迫真的に浮き彫りされている小箪笥。かつて中国が生み出したいかなる品よりも、五十倍もの創意と技巧と機知にあふれた、象牙や骨や木でできたすばらしい小逸品。あまりにデリケートなので触るのがこわいような磁器。要するに、お菓子屋に入った子どもでさえも、その朝の出島会所でのわれわれほどには、どれにしようかと迷って、菓子から菓子へと走り回りはしなかっただろう。
「僕の一点」は「緑釉鎬文鉢[りょくゆうしのぎもんはち]」――キャプションによると、14世紀、ベトナムの焼き物だそうです。「中村三四郎氏寄贈」とありましたが、ほかにもこの方の素晴らしい寄贈作品がたくさんありましたから、よほど眼のこえた陶磁コレクターだったのでしょう。
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