モラエスは「以上諸点の総括」の章でも、「改革の大演劇」によって「美という美がすべて荒廃しつつある」ことを慨嘆しています。荒廃のなかに残るわずかな美を探し求めた、サウダーデの旅の結晶が『日本精神』をはじめとするモラエスの著作だったように感じられます。
旅の画家とたたえられる川瀬巴水の取材旅行も、日本各地に残存する真美を捜し求めるサウダーデの旅だったのではないでしょうか。いくら近代化が進んでも、つまり西欧化が進んでも、巴水の慧眼は失われることなき根生いの真美を、行く先々で発見することができました。それは巴水におけるサウダーデの旅であり、その結晶が巴水新版画だったのです。
西欧化によって壊されようとする<日本>のなかに<日本>を捜し求める、モラエスと巴水の視線は同じ方向を向いていたんです。

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