2025年4月16日水曜日

クリス&クルス『芸術家伝説』3

 

1章序章に続いて、第2章英雄としての芸術家、第3章魔術師としての芸術家、第4章芸術家に振り当てられた特異な役割と展開させつつ、古今の芸術家伝説を博捜して、それぞれにきわめて示唆的 あるいは暗示的な分析と将来への見通しを加えていくのです。その結論にあたる部分を、最後の節「伝説と実生活」から引用することにしよう。

実生活の中の芸術家と、伝説にえがかれる芸術家のイメージの間には、両者を結ぶ二つの回路があるようだ。伝記作者たちは、いまも見たように、実生活の中の典型的な出来事を加工して、逸話の定型をつくり出す。ところが、芸術家伝説の中で形成されたその芸術家像の「定型」が、今度は逆に現実の芸術家の想像力に対して働きかけるようになる。芸術家というこの特異な職能集団の、あるべき定めのようなものが、それによって形づくられ、個々の芸術家もまた、大なり小なり、それに合わせて生き、それを芸術家たるもののたどるべき宿命として受け入れるようになる。


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