2023年10月19日木曜日

出光美術館「江戸時代の美術 『軽み』の誕生」2

 

つまり、絵の要素のすべてを画面のなかに描きつくすのは好ましくない、ゆとりや隙を感じさせるようにすべきだ、と。

後水尾は、絵が「つまらない」ことを高く評価する探幽の意見に賛同しながら、このような考え方が和歌の世界にも当てはまること、さらに、そのほかのさまざまな芸術の道において普遍的なものだと述べたといいます。江戸時代の文芸において、余白や余情といった要素を何よりも尊ぶことは、たとえば発句に「軽み」を求めた松尾芭蕉の俳諧理論などとも強く響き合うように、この時代を広く覆った価値観のひとつであったといえるでしょう。

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