2022年4月5日火曜日

月岡芳年「大日本名将鑑」15

少なくとも歴史画に限って言えば、日本人の判官贔屓とも関係しているのではないでしょうか。判官贔屓も輪廻や諦観と無関係ではないでしょう。

僕は最高の日本的歴史画こそ横山大観の「屈原」だと思っています。言うまでもなく、そこに描かれた屈原はかの歴史的な屈原じゃなく、みずから創立した東京美術学校を、石もて追われる天心その人でした。

表面的テーマは歴史画ですが、西欧的歴史画ではありませんでした。追放される天心――それは高貴な歴史的事柄でもなく、英雄的行為でもなく、宗教的テーマでもありませんでした。山口昌男にしたがえば「敗者」を描いているのです。

 愛国者を育てるべき歴史画を主張した天心を描いて、国民を鼓舞するどころの話ではなくなっちゃっています。これは判官贔屓の歴史画であり、象徴主義的歴史画であり、きわめて日本的な歴史画でした。 

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