2022年3月29日火曜日

月岡芳年「大日本名将鑑」8

 

事実、2年ほど経つと芳年は再び江戸の美へと回帰していくんです。その象徴的作品が「風俗三十二相」であり、「月百姿」です。後者にはたくさん歴史上の英雄が登場しますが、芳年の表現意欲は、もっぱら<月>に向けられています。

大江千里が「月見れば千々に物こそ悲しけれ我が身ひとつの秋にはあらねど」と詠んだ、悲しみの象徴である<月>が、ライトモチーフになっています。

歴史上の人物とは呼べないような庶民や農民も登場します。歴史画である「大日本名将鑑」から、懐かしの浮世絵へ戻っていくようなベクトルが感じられます。もう「月百姿」を歴史画と呼ぶことは、チョット躊躇されるのではないでしょうか。これが「風俗三十二相」になれば、もう完全に浮世絵じゃ~ありませんか。

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