2021年8月1日日曜日

徐寅・夏の詩9

 


徐寅「夜」

 太陽沈み虞淵[ぐえん]でも 明るいローソク灯[とも]されて

 夜更けにゃ煙[けむ]が浮遊する 塵[ちり]を吸収してしまう

 雪に覆わる剡渓[せんけい]の 友を子猷[しゆう]が訪ね行き

 漢の宮殿 月が出りゃ やって来るのは西王母

 軒にかかったクモの糸 高価な織物 作るべく

 風で消えてもホタルの火 燃えかすなんか残らない

 「いつになったら朝になる?」――落ち込んだとて訊くなかれ!!

 刻々進む水時計 夜明けの鐘はきっと鳴る

   *虞淵 むかし太陽が没すると考えられた池。転じてたそがれ、黄昏をいいます。

0 件のコメント:

コメントを投稿

東京美術『日本視覚文化用語辞典』2

 本邦初の辞典がここに誕生したんです。しかも日本語のあとに、すぐれた英訳がついているから便利です。便利なだけじゃ~ありません。日本語と英語における視覚文化へのアプローチが意外に異なっていることが浮彫りになり、おのずとわが国視覚文化の特質といった問題へ導かれることになります。この質...