この全生庵幽霊画コレクションのなかに、渡辺省亭の「幽女図」があるんです。モウモウと煙をあげる火鉢の傍らで、一人の女性が顔を片袖で覆いながら、泣き崩れているところを描いています。
多くの幽霊画が、恐ろしい顔や気持ちの悪い表情を描いて、見る人の恐怖心を掻き立てようとしているのに対し、省亭の「幽女図」は妖艶にして清々しいのです。幽霊が清々しいなんてチョット変ですが、うそじゃ~ありません。あるいは煙から浮かび上がった女性のようにも見えますから、ここにも反魂香のイメージを読み取るべきなのでしょうか。いずれにせよ、近代幽霊画のベストワンだと思います。
僕が東京藝術大学大学美術館をお訪ねしたとき、「幽女図」は出ていませんでした。ほかにどんな作品がでるんだろうと出品リストを眺めたら、後期に出陳されることがわかって、あの全生庵円朝旧蔵幽霊画展と、うまかった谷中のお蕎麦屋さんを思い出したのです(笑)
0 件のコメント:
コメントを投稿