2021年1月14日木曜日

渡辺南岳筆「玄宗楊貴妃一笛双弄図」3

 絵のすぐれた出来栄えに加えて、亀田鵬斎の賛が作品のクオリティーを高めていますが、もう一つ、箱書きを見逃すことができません。かの酒井抱一が蓋表にタイトルを、蓋裏に南岳と鵬斎をたたえる一文を書いています。しかも文化9(1812)の年紀があります。新しい箱に、その部分だけを遺した形になっていますが……。

しかしどうして京都で生れ京都で活躍した渡辺南岳の作品に、江戸で活躍した鵬斎や抱一が関与することになったのでしょうか? 

それは南岳が江戸に下ったことがあり、江戸の文人たちと交流したからなんです。とくに抱一とは金蘭の友だったように思われます。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿

サントリー美術館「絵金」20

  彼(四世鶴屋南北)は、封建道徳や武士社会の倫理のタテマエに縛られて生きねばならない人間の悲しさ・はかなさ・むなしさを描く反面、本能的な欲望のおもむくにまかせて、自由奔放に生きている人間の強さ・したたかさを存分に描いた。そういう魅力的な人間像は、社会の身分制度から疎外され、底辺...