2020年5月23日土曜日

シャンフルーリ『猫』9



加藤さんも指摘するように、シャンフルーリはすでに出版されていた日本旅行記や日本美術紹介などをもとに浮世絵を論じているのであって、一次資料として目新しい報告は載っていません。しかし『諷刺画秘宝館』は、近代の芸術は何のために、どのように人間を描くべきかという問いに答えようとして書かれた浮世絵論なのです。
浮世絵の中にこのような人間に対する真摯な眼差しがあることを、シャンフルーリは明らかにし、加藤さんはそれを指摘してくれたのです。日本人として、こんなうれしいことはありません。
加藤さんは「過去の秘密を探るのに、わたしは現代の眼鏡を通して古代を見るのだ」というシャンフルーリの言葉を引用しています。これこそ浮世絵の人間に対する真摯な眼差しを、シャンフルーリが発見できた理由でしょう。

0 件のコメント:

コメントを投稿

出光美術館「トプカプ・出光競演展」2

  一方、出光美術館も中国・明時代を中心に、皇帝・宮廷用に焼かれた官窯作品や江戸時代に海外へ輸出された陶磁器を有しており、中にはトプカプ宮殿博物館の作品の類品も知られています。  日本とトルコ共和国が外交関係を樹立して 100 周年を迎えた本年、両国の友好を記念し、トプカプ宮...