2019年9月23日月曜日

諸橋轍次博士と石井茂吉氏3



石井氏は完全といえない自身の健康を理由にいったん断りました。そこには、いく夫人の夫を思う気持ちが強く働いていたようです。しかし石井氏は懇請と熱意に負けて遂にこれを快諾、47500字におよぶ写植原字を、たった一人で、しかもわずか4年のうちに完成させるという契約を結んだのです。完璧主義者の石井氏は、結局8年間をそれにかけることになるのですが……。

僕が存じ上げている、あるタイポグラファーは、パソコン黎明期に、そのための原字を10センチ四方の枠のなかに烏口で製作していましたが、どう頑張っても1日に10字が限度であると語っていたことを思い出します。

それが4年間で47500字ですよ!! 実際は8年間だったとしても、石井氏の全身全霊を傾けた刻苦、血のにじむような勉励――それはいかばかりであったことでしょう。そのころの事情について、諸橋先生は次のように述べています。

0 件のコメント:

コメントを投稿

鎌倉国宝館「扇影衣香」9

  先日、 鏑木清方記念美術館の「あの人に会える! 清方の代表作<築地明石町>三部作」展で井手誠之輔 さん にお会いしたことをアップしました。その井手さんが、この「扇影衣香」展カタログに、「総論 絵から見た鎌倉の美術と東アジア世界――人と仏――」という巻頭論文を寄稿しています。 ...