出光美術館「奥の細道330年 芭蕉」<9月29日まで>
いよいよあと2日です!! 元禄2年(1689)3月下旬、松尾芭蕉は弟子の河合曽良をともなって旅に出ました。元禄2年は尊敬する西行の500回忌にあたる年、芭蕉はこの年を選んでこの大旅行に出発したのです。言うまでもなく、このときの紀行文が「奥の細道」ですが、今年は元禄2年から数えてちょうど330年、これを記念して開かれた久々の大芭蕉展です。
「僕の一点」は芭蕉に憧れ私淑した与謝蕪村の「奥の細道図巻」(京都国立美術館蔵)です。蕪村の筆になる「奥の細道図巻」は3点知られており、これに屏風が1点加わります。それぞれ特徴がありますが、いずれも蕪村の代表作に数えられています。かつて海の見える杜美術館が所蔵する北風来屯旧蔵の一本を、『國華』に紹介したことを、いま僕は懐かしく思い出しています。
このほかにも蕪村は奥の細道図を描いたことでしょう。そこには、芭蕉に対する絶対的尊敬の念があったはずです。
もちろん、蕪村が繰り返し同工異曲ともいうべき奥の細道図を制作した理由に、経済的事情や日々の生活があったことは言うまでもありません。例えば、来屯に宛てた安永7年12月21日付け書簡を見れば、金銭工面の腐心は痛々しいほどです。また当時における熱狂的芭蕉リバイバル運動も、理由の一つであったにちがいありません。
しかしそれらは、蕪村にとって二義的理由と言うべきものだったのではないでしょうか。奥の細道図は、あくまで蕪村の芭蕉に対するオマージュだったのです。
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