2019年8月26日月曜日

三菱一号館美術館「マリアノ・フォルチュニ展」2



デルフォスの垂直性は、直線裁ちを特徴とする我が国の着物とも美しき共鳴を起こしています。そんなことを思いながら見ていくと、フォルチュニが着物からヒントを得て作った作品が展示されているではありませんか。やはり、デルフォスを考え出したフォルチュニの感受性は、日本の着物にも鋭く反応していたのです。

ただし、その着物風ドレスは基本的に室内着だったらしく、デルフォスの上に羽織るものであったようです。やはりコルセットを嫌ったフォルチュニは、着物といっても、女性の体を締め付ける帯には関心が向かなかったのでしょうか。

グラナダで生まれ、ローマとパリで育ち、ヴェネツィアで活躍し成功を収めるに至ったフォルチュニが、どこの国の人かなどと問うことはもうナンセンス、すぐれたコスモポリタンであったというべきでしょう。そのヴェネツィアの邸宅兼アトリエは、フォルチュニ美術館として公開されています。


0 件のコメント:

コメントを投稿

鎌倉国宝館「扇影衣香」9

  先日、 鏑木清方記念美術館の「あの人に会える! 清方の代表作<築地明石町>三部作」展で井手誠之輔 さん にお会いしたことをアップしました。その井手さんが、この「扇影衣香」展カタログに、「総論 絵から見た鎌倉の美術と東アジア世界――人と仏――」という巻頭論文を寄稿しています。 ...